第2次世界大戦後に見られるミュルダールの福祉国家擁護の経済思想の端緒は、1930年代スウェーデンにおける彼の人口政策論に見出される。出産・育児にかかわる公的サービスの提供や現物給付を普遍主義的に施すべきとする「消費の社会化」が彼の提案であったが、それは、たんに人口増加を目的とした出産奨励策ではなく、「予防的社会政策」として出産・育児にかかわる経済的・社会的不平等を排すとともに、主に若年層向け人的資本投資を図る方策でもあった。それは公正と効率を両立させ、需給両面から長期的に成長を志向する政策提言であった。
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