研究概要 |
自己身体の知覚評価をするために人物描画法や肢位模倣テストにて評価を行うことが多い。しかし,これらの評価では,幼児が認識している身体部位を把握でき,また各身体部位の形成の発達過程を明らかにすることができるが,環境と自己との関係を評価することはできない.また,量的・質的な客観的評価という点では不十分である。 軽度発達障害児は"身体運動が稚拙で感覚機能の低下もあるため,空間で身体を上手に操作することができない(Ayres:1978)"。しかし,日常生活において,例えば軽度発達障害児が"意図的な動作"に対して,"物にぶつかることが多い"という研究報告は見当たらない。 本研究は,軽度発達障害児は環境に対して自己の行為の可能性の見積もり(自己身体知覚と環境との関係;アフォーダンス)が可能かどうかを,自己身体の大きさの知覚を用いて検証することであった。この目的を検証するために,まず軽度発達障害と診断されている幼児が,物にぶつかることが多いかどうかくぐり動作を利用して検証した。その結果,接触しないように注意をする,しないにかかわらず,発達障害児は接触頻度が高かった。また,発達障害児は腰部の接触頻度が高く,膝蓋骨の高さのバーへの接触頻度が高い傾向にあった。このように視覚フィードバックを随時利用した接触回避が困難な状況において,発達障害児の身体接触が多いことは,身体特性情報に基づく行為の見積もりの不正確さが,発達障害児の身体接触の多さの原因であることを示唆した。(投稿中) 実証実験の結果から,発達障害児が接触する原因が姿勢制御能力,運動能力,視覚見積もり,運動見積もりの問題が考えられた。そのため現在,軽度発達障害児の姿勢制御能力,運動能力について検証を行っている。
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