本研究は、日韓の高校生を対象とする日本語・韓国語教育の枠組みの中で日韓交流授業を実施し、そのような授業を通し生徒がどのような学びを得るかについて検討し、今後の日本語教育と韓国語教育とのネットワーク作りに貢献することを目指すものである。中等教育段階において日韓交流授業は社会科教育や異文化間教育の枠組みの中で実施され研究もされてきたが、言語教育の枠組みの中で行う日韓交流授業についてはこれまで体系的な研究がされてこなかった。そこで本研究では日本語教育と韓国語教育の協働で行う日韓交流授業のシラバスのプロトタイプの開発から行うこととし、平成19年度は日韓交流授業のシラバス・カリキュラムの策定を行った。このシラバスは韓国における日本語教育と韓国における韓国語教育のそれぞれの国が定める基準的なカリキュラムの接点の上に成り立ち、話題ベースのタスク・シラバスを基本とする。このシラバスの開発目的や生徒の興味・関心を考慮した実践的シラバス・デザインの内容については、韓国日本語学会や宮城学院女子大学研究論文集に発表した論文などを通して、韓国と日本両国の教育関係者に対して情報提供を行った。平成20年度には宮城学院高等学校の韓国語クラスと三聖高等学校の日本語クラスとの問で、作成したシラバスに基づき1年間に渡って日韓交流授業を行った。生徒に対する事後調査(インタビュー、レポート)の結果から、生徒が日韓交流授業を通して学習言語や文化に対する興味関心を高めたこと、日韓の生徒間での相互理解を深められたことがわかった。また、お互いに学習支援のための教材を作成し提供できる可能性があることがわかった。
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