本年度は、前年度の基礎的研究を土台にし、実際にベルギーへ出張し、現在「国家分裂危機」に陥ったベルギーの政治過程(200日に亙る政権交渉過程)について、現地新聞資料などを用いて調査した。 ベルギーでは、93年以降連邦国家となったが、それ以降も市民が首都ブリュッセル近郊へ移住する傾向はやまず、それによってブリュッセル周辺地域の民族対立が再生産されていること、さらに、連邦化によって各民族が政治的自治を高めたが、しかし、それによって逆に主要政治アクターが民族主義的主張を高め、合意形成に時間を要し、政治不信を高めていることを明らかにした。 そもそも我が国においてベルギー研究者が少ないなかで、さらに最近の動向を研究しようとするものは、ベルギーにおいても少なく、希少性という点でまず重要であった。 特に93年に成立した連邦制度が、ベルギーの民族対立を一層あおっているとの申請者の見解は古典的なレイプハルトの主張に対する批判となる。
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