本研究の大きな目的は発達性読み書き障害児の評価、介入に是非とも必要な基礎的データを作成することにある。具体的には、まず、発達性読み書き障害の評価や介入の効果半掟に有用でありながら、日本ではまだ作成されていない読み(音読)年齢の基準値を作成する。また、近年特に文字と音の対応が規則的な言語において読みの正確性とともに読みの流暢性あるいは自動性(音読速度)における問題が大きく取り上げられているが、本研究ではこの音読速度に関しても、学年別あるいは年齢別の基準値を作成する。 平成19年度には、頻度や親密度(馴染み深さ)、心像性(イメージしやすさ)、学年配当といった各種の漢字の属性を考慮して、検査用の単語リスト94語の選定を行った。また、音読速度の測定に用いるひらがな単語28語、ひらがな非単語16語、カタカナ単語28語、カタカナ非単語16語からなる語列、および漢宇かな混じりの文章を作成した。 その上で、この単語リストおよび音読速度測定用の単語、非単語列と文章に関する音読検査を、小学1年生から6年生の読みに関する定型発達児約400名に個別に実施した。これらの結果を解析し、音読に関する読み年齢の基準値を作成することによって、実際に発達性読み困難児がどの程度読めるのか、何歳に相当する読み能力を獲得しているのかに関する、日本語話者に共通の尺度ができることになる。また、音読速度についても小学生に関しての基準値を作成することができる。今後さらにこれらの検査を発達性読み困難児に適用し、音読年齢を合わせた場合の定型発達児と読み困難児の認知機能の相違について検討する。得られた結果から介入に関する示唆が得られるものと考えられる。
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