研究概要 |
本研究の目的は、統制性と自動性の関連を健在指標と潜在指標の組み合わせを用いて検討することにある。特に1)顕在指標と潜在指標との乖離とその影響、2)自動性から自動性へ(および統制性から自動性へ)の移行について明らかにすることに焦点を当てた。初年度である19年度には、おもに2点について行った。 1)自動性と統制性の測定の準備を進め、初期調査および実験による検討を行った。本研究では、「性差」を採択した。それは、a)状況によって生じる自動行動(女性/男性らしさ)に合意があり、かつb)統制性によるコントロールが可能でありながら、c)性差にはある程度の個人差がみられ,本研究の検討に適しているためである。通常「女性」性を高く重んじる女性は、自動的に女性に関する刺激に反応する一方で、男性性を抑制していると考えられる。 本年度は、まず、女性性に関する潜在指標AMP(感情誤帰属手続き)を作成した。まず、62名による予備調査から、女性に関心が高く、同時に男性になじみのない品(化粧品、小道具など)を特定し、その写真刺激による女性性AMP試作版を作成した。12名の女性協力者に行ってもらい、大まかな妥当性と信頼性が確かめられた。一方、顕在指標として性に関する信念や行動を尋ねる自己報告尺度、複数を88名の大学生に試験的に行った。 2)自動性の影響はいつ、どのように消失するかについて、64名の大学生を対象にAMPを利用した検討(アンプライミング研究・開示研究)を行った。参加者は、ポジティブ(ネガティブ)刺激を提示されると、そこから生じるムードをその後に続く、中性刺激に帰属して評価する傾向(AMP効果)がみられるが、これは、いったん、最初の刺激について評価を行った後であれば、このプライミング効果が消え、中性刺激に対する評価の歪みが生じなくなった。 このことから、影響の意識化が、自動性の効果の消失の鍵であることが示唆された。
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