研究概要 |
本研究の目的は,統制性と自動性の関連を顕在指標と潜在指標の組み合わせを用いて検討することにあった.具体的には,顕在指標と潜在指標との乖離とその影響,そして自動性と統制性の機能的な関係や統制性から自動性への移行について示すことに焦点を当てた.2年目である20年度には,主に3点について行った. 1)自動性と統制性の機能的な関係を明かにするための実験,PC上における,意識の感覚(自由意思)と自動性と関連を見た実験が実施された(20年度4月-6月).これは,オランダ,ユトレヒト大学(Aarts教授)との共同で行っている研究で,この結果は,Cultural and universal routes to authorship ascription:Effects of outcome priming on experienced self-agency in the Netherlands and Japanとして,この分野における最も影響力のある学術誌の一つJournal of Cross Cultural Psychologyでの掲載が決まり,西洋文化と日本文化における意識,非意識の相違を示す知見として,大きな反響を得ている. 2)顕在指標と潜在指標の乖離を見るために,新しい指標である感情誤帰属手続き(AMP:Payne et al.,2005)を用いた研究が行われ,『感情誤帰属手続きによる潜在目標の測定:潜在および顕在目標による日常行動の予測』として,教育心理学研究に掲載が決定した.これは,本邦初めてのAMPを用いた研究知見である. 3)2009年3月には,この分野,自動性に関する集大成ともいえる本,Social psychology and the unconscious(Bargh教授編)の訳本『無意識と社会心理学』を出版することが叶った(ナカニシヤ出版),申請者は,企画,訳,編集に携わり,本邦での研究が一段と進むことを期待し,全力を尽くした.
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