本研究では、「企業側の視点」から、顧客のブランド・製品評価における国籍情報-企業ブランドの国籍(Country-of-Brand:COB)および製品原産地(Country-of-Origin:COO)-の影響を比較・分析した。当該研究分野には分析アプローチが消費者調査に大きく傾斜している現状がある。それ故、COB-COO効果に対する企業側の認識と対応の実態が必ずしも明らかになっておらず、それを追究することは、分析アプローチの傾斜を解消し、新たな視点から知見を確保する点で重要な意義をもつ。そこで企業アンケートおよびインタビュー調査による実証研究を行った。主な研究成果は次の通りである。 1.COOとCOBの働きに対する企業側の認識:(1)顧客評価におけるCOO-COB影響の比較で、COBがCOOより相対的に強い影響力を有すると認識される傾向があった。(2)COBは企業顧客(生産財購入者)より一般消費者(消費財購入者)の方で強い影響を発揮する、しかしCOOの働きには製品類型(生産財/消費財)による影響力の差がないという認識が示された。(3)日本企業と外資系企業の間にCOO-COB影響に対する認識の差はみられなかった。 2.COOとCOBの働きに対する企業側の対応:ポジティブ(ネガティブ)なCOO/COBイメージの活用(抑制)の実態を調べた結果、ポジティブなCOO・COBをマーケティング活動で活用した企業の多数が成果をあげたと答えている。そこで、COOとCOBが有効な顧客への訴求・差別化手段になり得ると考えられた。但し、ポジティブでないCOOの影響を抑えようとする企業は少なかった。 総じて、企業側の観点でCOB-COO効果を論じた研究が少ないことから、本研究の成果はCOBとCOOの働きを企業側の観点から明らかにした点で独創的であり当該分野に貢献を果たすものと思われる。
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