今年度は、昨年度に引き続き世論調査の結果と民主主義の基盤としての世論との違いを理論的に整理することと、現在新聞社や放送局などマス・コミが報道している世論調査の方法や頻度、それに報道の仕方などの基礎的な情報の収集を行った。この内、世論の概念整理については、世論調査の結果は、ある具体的な争点に関する人々の意見の分布としての世論(=a public opinion)であり、権力の正統性を主張する場合などに使われる世論(=Public Opinion)とは区別すべきだあるという考えをまとめ、日本民間放送連盟が出している「月刊民放」に寄稿した。 また福田改造内閣の発足直後のマス・コミ各社の世論調査では、内閣支持率の数値が社によつてサンプリング誤差を超える違いが生じている。当時の町村官房長官は民放の番組に出演した際、この内閣支持率に関してコメントを求められたのに対して、世論調査への不信感を示した。これを受けて、年度後半には内閣支持率を中心とするマス・コミの世論調査が、一般の国民にどのように受け止められているのかを把握するための研究に取り組んだ。具体的には、ブログ記事の分析システムを活用して、麻生内閣の内閣支持率に言及しているブログ記事を時系列で拾い上げて内容を分析した。その結果、新聞社の内閣支持率が報道された直後に急激にブログ記事が増えるというパターンを繰り返していること、記事内容は支持率の数値を引用して麻生内閣を評価するものが大半を占めることを見出した。また少数ではあるが、世論調査自体やマス・コミに対する不信感を持ち、世論調査報道を批判するものもあった。このブログ記事に関しては今年度に集めたデータの分析を継続することにしている。
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