本年度は、昨年度から継続して国内外の各地で行った地方税および環境政策に関する現地調査・資料収集活動をもとに、論文執筆活動に従事した。まず、今年度前半に欧州出張(ドイツ・オランダ)で現地の専門家から環境政策(州等の地方自治体レベル)と環境税(国税レベル)の乖離についての説明を受け、ソウルでは大都市の交通政策の一環としての車両規制の実態を調べた。今年度後半は、関西(大阪・神戸)に出張し、関西地域の都市開発ならびに水資源保護の実態について戦前ならびに昭和40年代の公害対策等の歴史的な経緯も含めて研究調査を行った。 上記の研究をふまえ、2000年の地方分権一括法の施行後にブームとなった「地方新税」が、当初利用が予想された法定外目的税・普通税の枠組みではなく、特に森林や水源保護をうたった地方環境税が住民税・法人税の附加税として導入・定着されつつある現状を地方税の歴史的経緯をもとに分析し、その背後に、国レベルの広域行政とは異なり、特定の(=顔の見える)利害関係者の対立が潜在化しやすい地方税の導入の難しさ、ならびに、地方自治体レベルの行政ゆえに可能な他の政策(交通政策・環境政策)との連携・代替性があり、今後も発展可能性があることを、「わが国の今後の地方環境税のあり方(上)(下)」で論じた。
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