研究概要 |
1.アメリカ動産担保法と金融システム アメリカの動産担保法の形成には,その背量にあった金融システムが多大な影響を及ぼしていた。 具体的には,19世紀後半のアメリカでは,国内の資金が不足していたため,投資銀行を介してヨーロッパの投資家から資金を調達する必要があった。特に,鉄道の建設のために多くの資金が必要とされた。このような資金調達を支えたのは,「モーゲッジ」と呼ばれる不動産桓保権によって担保されだ征債であったが,アメリカの木動産ほ,それほど担保価値の期待できないものであった。そこで,社債の安全性を高めるたに必要とされたのが,動産担保であった。このような事情を背景として,現在のUCC第9編にも規定されるいくつかの動産担保法理が形成された。以上の点については,法学協会雑誌125巻1号〜3号掲載の論文にまとめた。 他方で,現在のアメリカ動産担保法の特徴とされる在庫担保に関しては。19世紀後半から20世紀前半にかけてのアメリカは保守的なままであった。在庫担保は,国内での取引ではなくむしろ輸入の際に用いられたが,ここでは,船荷証券などの有価証券を用いた国内銀行による小規模なファイナンスが行われた。このことが,保守的な在庫担保法の背景にあったと考えられる。 ところが,このような状況は,自動車産業の隆盛とともに一変する。自動車のホールセール・ファイナンスのために在庫担保が必要とされ,これを受けて,現在のUCC第9編につながるような在庫担保法理が形成される。以上の点については,法学協会雑誌125巻6号7号に掲載予定の論文にまとめた。 2.アメリカ債権担保法と金融システム このように,アメリカの動産担保法がアメリカの工業化と不可分であるのに対して,債権担保は,実は,農業金融を背景として生成された。 具体的には,綿花栽培に対するファイナンスがファクターと呼ばれる金融機関を生み出し,ここで用いられた仕組みが,債権担保法の原型となっている。以上の点に関しては,論文として公刊する予定であるが,掲載誌などは未定である。
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