本研究は、平成19年度および20年度の二年間において、「正義へのアクセス」に関わる法律専門家の倫理と責任について、日米の比較検討を行うことを目的としている。平成19年度は、研究実施計画に基づいて、主に米国の状況を調査するため、基礎的資料の収集および米国での現地調査を実施した。 米国においては、弁護士人口は2006年の時点で136万3千名を超えており、これは統計上市民約300名に対して弁護士が一人存在していることになる。しかしながら、米国における「正義へのアクセス」の問題は決して解決しておらず、法的サービスに対する満たされていない需要(Unmet legal needs)を持つ者は100万人を超えるとも言われている。このような状況に誰がどのように取り組んでいるのかを検討するため、資料収集としては、主に弁護士と市民の法律アクセスについて法社会学的視点から書かれた文献および専門家責任・専門家倫理(Professional Responsibility)について書かれた文献を収集し、また、1月21日から2月1日にかけての現地調査では、(1)ABA Pro Bono Center(シカゴ)、(2)スタンフォード大学Deborah Rhode教授(法社会学・法曹倫理専門)(ロサンゼルス)、(3)ワシントン大学臨床教育センター(シアトル)、(4)ワシントン州弁護士会正義へのアクセス対策部(シアトル)、(5)シアトル大学Ada Shen-Jaffe教授(法律扶助問題専門家)(シアトル)から各1、2時間ずつ話を伺った。 平成19年度に行った調査の結果については、日本法社会学会(5月11日、12日)およびLaw and Society Association(5月28日〜30日)において発表し、論文としても同年度中の公表を目指したいと考えている。
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