研究概要 |
本研究は、平成19年度および20年度の二年間において、「正義へのアクセス」に関わる法律専門家の倫理と責任について、日米の比較検討を行うことを目的としている。平成20年度は、研究実施計画に基づいて、主に日本の状況を調査するため、基礎的資料の収集および日本での現地調査を実施した。 我が国においては、平成21年4月1日現在において、弁護士の人口は約27,000人であるが、その約半数の弁護士は東京圏で実務をしており、弁護士へのアクセスが必ずしも容易でない地域はまだ多数存在する。「全国どこでも法的トラブルを解決するための情報やサービスを受けられる社会の実現」を理念として設置された日本司法支援センターは、各都道府県に事務所を設け、情報提供、民事法律扶助業務、国選弁護関連業務、司法過疎対策等を行っている。現地調査では、全国七箇所の法テラス法律事務所を訪ね、スタッフ弁護士の方々にインタビューを行った。具体的なデータの提供もして頂いたので、インタビューの内容と共にこれから検討を行い論文としてまとめる予定であるが、調査を終えた印象としては、法テラスのスタッフ弁護士は地域住民に寄り添い、他の機関とのネットワークを構築し、地域全体の法の支配の拡充を目指して活動している。それは、これまでの弁護士像とは異なる、community developerとしての新たな弁護士像を構築しており、そこでの「あるべき弁護士像」もまた、これまでとは異なる視点をもとに検討していく必要があると考える。 平成20年度に行った調査の結果については、Law and Society Association(5月28日〜31日)において発表し、論文としても平成21年度中の公表を目指したいと考えている。
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