2008年度は、子育て支援のなかでも、自宅で子どもを預かってケアを提供する家庭型支援の提供者、いわゆる「保育ママ」に着目し、インタビュー調査を実施した。具体的には、「東京都家庭福祉員の会」および「多摩地区家庭福祉員の会」の会員を中心に、合計35名の家庭福祉員(東京都における「保育ママ」の公称)に対して、彼女たちの職業上の経験について聴き取りを行った。 「保育ママ」については、そのケアの提供形態ゆえに、提供者と子ども、また、提供者と保護者の間に「家庭的」で密接な関係が形成されることがしばしば肯定的に評価されている。これに対して、本研究では、海外における先行研究の知見を参照しつつ、「保育ママ」と子どもの家族、母親との間に子どもへのケアとその責任の配分をめぐってどのような状況が生じているのかを、そのコンフリクトをも含みこんだかたちで記述することを試みた。その成果を論文化したものを、学会誌に投稿し、現在、審査中である。また、調査の成果を概観した文章が東京都家庭福祉員の会の会報に掲載されている。これらの研究は、2008年度に児童福祉法の改正によって大きな転換期を迎えた「保育ママ」制度のありかたについて検討するうえでも、貴重な素材となるものであると考える。 これらに加えて、母親の子ども数の選好と子どもに関する価値観がどのように関連しているのかを計量社会学的に分析した成果を共著論文として刊行した。この論文は、日本社会の少子化状況について、それがどのような意味づけとの関わりでもたらされているかを探索するという意味において、本研究の背景となるものである。
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