本年度の辺野古調査における主な研究目的は、辺野古区の行政システムや意思決定構造の調査、および区長や行政委員への聞き取りである。調査は2008年2月4日から12日にかけて行われ、辺野古区長、辺野古区職員、行政委員、区選出の市議会議員などから話を伺うことができた。また辺野古区の内部規約の写しも入手することができた。その結果、辺野古区の意思決定が、行政委員会という18名の区民によって構成される組織に独占されていること、行政委員は先祖代々辺野古に居住している旧住民が大多数を占めていること、その背景に、1959年に辺野古に建設された米海兵隊基地キャンプ・シュワブに由来する軍用地料の存在があることなどが明らかになった。 同じく本年度の東洋町調査における主な研究目的は、東洋町が高レベル核廃棄物処分場建設問題をどのように軽験したのか、その概要を把握すること、町長選挙における反対派候補の大差での当選を可能にした条件について聞き取り調査を通して探ること、外部からの支援者がどのような役割を果たしていたのか明らかにすることである。調査は2008年3月7日から11日にかけて行われ、東洋町長、町議会議員、反対運動の端緒となった若者のリーダー、外部からの支援者、および当時反対運動に参加していた人々などから話を伺うことができた。その結果、これまで東洋町周辺に核施設がなかったため、住民側に核施設への強い不安や恐怖が生じたことが反対派町長の誕生の背景にあったこと、今でも町内にしこりは残っており、今後は町政改革が重要な課題であること、外部からの支援者の果たした役割は主に高知県内における世論喚起にあったことなどが明らかになった。
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