研究概要 |
探し物がなかなか見つからず,人に指摘されて,まさに日の前に置いてあるのに気づき,自分の不注意にはっとした経験はないだろうか.視覚的注意研究では一般に,視野内の特定の対象に意識的に気づき,言語報告のような行動に結びつけたり,それが何であるか認識したりするには,注意による情報選択が重要である点が繰り返し強調されてきた(e.g., Simons & Levin, 1997). 一方,ごく近年,自然画像を刺激とした場合は逆に,注意が十分には向けられないような状況においても,画像の場面やカテゴリー等の情報がかなり周辺視でも高速で正確に複数報告できる可能性が報告され,この矛盾が話題になっている(e.g., Rousselet, Fabre-Thorpe & Thorpe, 2002). ではなぜ自然画像は注意が不十分であっても周辺視で認識しやすいのであろうか.そもそも周辺視はその見かけ上の空間改造能の高さや周辺視までフルカラーで広がる視野をどのような脳の仕組みで生成し我々に見せているのであろうか.本研究提案の目的は特に周辺視の機能に特化してこれらの点をfMRIにより検討するというものであった.しかし,スキャナ内で眼球運動測定装置を被験者の覚醒状態を確認する以上の目的で使用することに対する倫理規定の問題や,被験者の頭部をスキャナの中で比較的長時間完全に固定することで眼球運動計測時のキャリブレーションを維持する問題,周辺視測定のためせめて片側視野のみでも広い視野をスキャナのなかで確保する問題等課題は多く,しかも研究実施期間中申請者の研究実施体制に大幅な変更があったことも手伝って,これらの問題を1年半の研究実施期間ではクリアできていないことから,対外的に発表できるような研究成果を得るまでにはさらなる時間が必要である.
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