研究概要 |
【目的】健常乳児に比べ入院乳児は母親との接触経験が少なく,母子の絆(愛着)を形成することも難しいといわれている。そこで,在胎期間や生後の接触経験が,乳児の母親認知に影響するか検討した。 【方法】参加児:NICU入院乳児46名。実験計画:2(在胎週数:短・中)×2(接触頻度:少・多)の被験者間計画。刺激:母親の声かけ音声。測度:MIRSによる前頭領域の脳血流変化。手続き:授乳後の睡眠中の乳児に対し,スピーカーを通して音声刺激を呈示し,その間の脳血流変化を記録し,在胎や接触頻度により乳児を群分けし比較した。 【結果】母親声に対する前頭領域の脳活動はどの群においても活発であった。これまでの斉藤の研究から,乳児に語りかけるような音声(マザリーズ;IDS)や抑揚のある音声は,乳児の前頭領域の活性化を促すので,乳児に語りかけるような母親声を刺激としていたため,どの群の乳児も声に対して活性化したと考えられる。活性化の程度は在胎期間や生後の接触頻度により異なると予想されたが,有意差はえられなかった。しかし,未熟児出生や入院期間が長く母子の接触が乏しいとされる親子でも,乳児の母親認知能力は変わらないということは,乳児の他者認知において,接触量には影響されにくく,どのような接触経験をしているのかという質的差があると考えられた。
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