反芻は、不快な情動に関する反復的思考と定義されており、本年度の研究では、反芻が後悔情動や怒り情動に及ぼす影響とそのメカニズムについて調べるため、実験室実験を行った。第一の実験では、カード選択による意思決定課題によって後悔を喚起させ、課題の直後と一定時間の間隔をあけた後の後悔情動や帰属の強さについて測定した。前年度に作成した日本語版反芻反応尺度(RRS)によって、参加者を反芻しやすい高反芻群と反芻しにくい低反芻群に分類し、比較したところ、反芻傾向が高い人はそれが低い人よりも一定時間後に強い後悔を感じていた。それゆえ、反芻は後悔情動を促すことが示された。ただし、そのメカニズムについては明らかにされなかった。 第二の実験では時間経過に伴う後悔情動の変化について検討した。意思決定課題直後と1時間経過後の後悔情動の強さの差分を変化量とした。その結果、反芻傾向が高い人はそれが低い人よりも変化量が少ないというパターンが示されたものの、統計的な有意差は認められなかった。第三の実験では、反芻が怒り情動に及ぼす影響を検討した。この実験では、国外の研究者が開発した怒り反芻尺度を翻訳し、この尺度における得点が高い人を高反芻群、低い人を低反芻群とした。実験では、他者との共同課題による報酬分配において、不公平な分配を受けることで、参加者に怒り情動を喚起させ、分配直後と一定時間経過後に怒り情動を測定した。その結果、反芻傾向が高い人は一定時間経過後に、強い怒り情動を感じていた。このことは反芻が怒り情動を昂進させる可能性を示唆している。ただし、そうした状態は長続きせず、そのメカニズムについては明らかにされなかった。
|