本年度は昨年度に引き続き1990年度末に東名阪市場1・2部に上場していた1818社(金融・電力・ガス業を除く)をサンプル企業とし、創業者一族の経営、株式保有を通じた支配が企業業績に与える影響を分析した論文“Family Firms and Firm Performance: Evidence from Japan"の改訂に努めた。具体的には結果がロバストであることを示すために、メディアンリグレッション、パネル分析、異なるファミリー企業の支配を表す指標の使用、世襲の場合と非一族の経営者に経営が引き継がれた場合の業績の比較などをおこなった。それらのテストの結果は昨年度までに得ていた結果、創業者が経営に参加しているファミリー企業の業績は非ファミリー企業を上回っているが、世襲が行われ、創業者の子孫が経営を引き継ぎ、なおかつ最大株主であるファミリー企業の業績は非ファミリー企業を下回っていると同様なものであった。とくに世襲の前後の業績を比較したテストは、創業者から非一族の経営者に経営が引き継がれた場合と世襲が行われ、創業者の子孫が経営者になった場合を比較すると統計的に有意に世襲が行われた場合の方が、業績が低下していることを示していた。これらの結果はこれまでに得てきた結果がロバストであることを示していると考えることができる。またこれらのテストに加えて、経営者の交代、特に創業者一族出身者が関与している社長交代に対して株式市場がどのような反応をするかをテストし、市場が世襲をどのように捉えているのかを明らかにすることにも取り組んだ。
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