本研究は、国際連合が設置あるいは設置予定である「社会権」保障のための実施措置及び「社会権」の規範的内容及び性質に関する議論を検証することにより、21世紀の日本における「社会権」保障のあり方を提唱することを目的としている。その目的を達成するために、本年度は特に「健康権」に焦点を当てて以下のことに取り組んだ。 1. 健康権に関する国連システム下の関連機関の文書の整理と分析 国連システム下の機関(主に、人権理事会、健康権に関する特別報告者、社会権規約委員会、世界保健機関及び国連開発計画)の動向をインターネット等でサーベイし、関連文書を入手し、それらを整理・分析した。 2. 日本の健康権遵守状況のモニタリング調査 アバディーン大学法学部のBrigit Toebes博士が主催する'Monitoring the Right to Health:Multi-Country Study'プロジェクトの一環として、日本の健康権遵守の状況についてモニタリング調査を実施。上記国連システム下の関連文書に加え、各条約機関、OECD、IMF等の関連文書と、国内の健康権に関連する文書・文献を収集し分析し、英文レポートをまとめた(レポートの発表は2009年度)。 3. 国際シンポジウムの開催及び調査報告 2009年1月10日に立命館大学において、国際シンポジウム「健康権の再検討:近年の国際的議論から日本の課題を探る」を開催した。シンポジウムには、前国連健康権に関する特別報告者のPaul Hunt氏をお招きし、国際レベル及び日本における健康権保障の現状を確認し、今後の課題について議論した。また、本シンポジウムで棟居は、「日本における健康権保障の現状:健康権の指標からみた日本」について報告をした。
|