研究概要 |
本研究の目的は、功利主義倫理学者として著名なシジウィックの主著である『倫理学の諸方法』『経済学原理』『政治学要論』の相互関係を明らかにすることで、『哲学の領域と諸関係』で提示されたようなシジウィックの思想体系を再構築することである。それは、シジウィック自身の思想の全体像を解き明かすのみならず、哲学体系の中に位置づけられる倫理学・経済学・政治学という学問領域の相互関係の意義を問いかける試みでもある。現代的意義をもつ優れた倫理学者であったシジウィックの『倫理学の諸方法』と『経済学原理』の直接的問係を明らかにすることには、「経済と倫理」という問題に新たな解決の道を拓く可能性が秘められていると考えられる。 以上の観点から、今年度はシジウィックの社会哲学に焦点を当てて研究を進展させた。まず2007年6月には、英文ワーキングペーパーを公表した(Sidgwick's Social Philosophy)。また、同ペーパーに基づき、国際学会にて研究発表を行った(Sidgwick's Social Philosophy,The 11th Annual Conference of the European Society for the History of Economic Thought,Louis Pasteur University-Strasbourg,France,July 2007)。さらに以上の著作・学会報告に寄せられたコメントなどをもとに、学術論文「シジウィックの社会哲学論」を刊行した。 また、イギリスに渡航し、ケンブリッジ大学トリニティカレッジ図書館にて、Papers of Sidgwickの調査を行った。同調査で得られた研究成果については、引き続き来年度に公表する予定である。
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