平成20年1月〜平成20年3月の期間に、高齢者福祉施設に入所している高齢者15名と、在宅で生活している60歳以上の高齢者43名の合計58名に、生きがいの感じ方と生きがいの対象についてアンケート調査を行った結果、在宅居住高齢者と施設入所高齢者の生きがいの感じ方では、有意な差が認められ(P=0.002)、在宅居住高齢者の方が生きがいを感じている傾向が強かった。また、在宅居住高齢者の生きがいの対象は多岐に渡っており、就業している高齢者の方が生きがいを強く感じている傾向が示された。 平成19年10月に介護職員のバーンアウト・POMS・自己効力感の調査を実施し、回想法導入のための勉強会を開催した。また、回想法実践中の観察評価尺度を検討し観察評価尺度を作成した。平成20年2月から、高齢者福祉施設におけるグループ回想法の介入と多層ベースラインによる調査を開始。全対象者は15・名(男性2名・女性13・名)で平均年齢85.7±8.43歳で、使用する評価尺度は、対象者への直接質問による評価として、(1)生きがい感スケール(K-I式)(2)高齢者抑欝評価尺度(GDS15)(3)POMS短縮版で、介護職員による観察評価として、(1)意欲の評価(2)N式老年者用精神状態尺度(NMスケール)(3)N式老年者用日常生活動作能力評価尺度(N-ADL)で、2ケ月毎に調査を実施。さらに、回想法実践者による実践中の評価として、毎回(1)逐語録(2)ビデオによる観察記録(3)行動観察尺度(良い状態と良くない状態の評価スケール)(4)ベンダー観察記録を用いて評価を実施。平成20年2月26日〜3月28日の期間に、1クール目の回想法の介入を行い、直後の結果では、介入群に生きがい感スケールの得点は全員が上昇し、抑欝感・怒り・不安・混乱が軽減され、活気が上昇する傾向が示された。ベンダー観察記録と行動観察尺度においても、回を重ねる毎に改善していた。
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