本研究の主目的はパテントプールのライセンス行動、及びプール形成の厚生分析を行うことであった。本研究の最も重要な特徴は、第1に、パテントプール内の技術的構造(基本特許と周辺特許)を考慮した点、第2にパテントプールのパッケージメニュー提示を考慮した点である。本研究では、パテントプールのパッケージライセンス行動を、multi-product monopolyによる財のbundlingとしてとらえ、その文脈に関連する理論モデルを拡張することによって分析を行った。 本研究における分析の結果、基本特許と周辺特許はパテントプールによって一括管理・ライセンスされたほうがライセンス価格は下がり、社会厚生上望ましいことがわかった。このことは、現在、既に周辺特許を含み管理しているDVD6CやMPEC-LA等のパテントプールに対して、その社会的な望ましさの理論的根拠を与える。 また本研究では、既存研究ではあまり分析されていない、multiple package licensingにも焦点を当てている。これは、基本特許と複数目的をもつ周辺特許がパテントプールによって一括管理・ライセンスされる場合、特に重要となる。分析の結果、パテントホルダーがパテントプールからの利潤(ロイヤリティー)を重視するならば、multiple package licensingは提供されにくく、一括ライセンスのみ提供されることがわかった。このことは、実際に観察されるパテントプールの多くが、一括ライセンスのみを提供していることを説明している。 これらの一連の結果は、パテントプールに関する競争政策を考える上で、重要な基礎結果といえる。
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