研究課題
主観的幸福感やポジティブ感情(positive affect:PA)が、一過性のメンタルストレス・テスト負荷時の心臓血管系反応に影響するとの知見が報告されている。しかしながら、先行研究では状態的な幸福感やPAの効果が主に検討されてきており、特性的な幸福感の効果を検証したものは非常に少ない(Pressman&Cohen, 2005)。そこで本研究では、大学生152名を対象に特性的な主観的幸福感尺度(島井ら,2005)を実施し、平均点+1SD以上の得点を示す幸福感高群(20名)と平均点-1SD以下の者と低群(20名)を抽出し、幸福感がメンタルストレス・テストに対する主観的ストレス反応および心拍反応に与える影響を検討した。手続きは、実験室に入室後に10分間の順応期を設定し、その後2分間のスピーチ準備期、3分間のスピーチ課題、そして5分間の暗算課題を施行し、30分間の回復期を設定して実験を終了した。課題前後と回復期後にストレス状態質問紙(岡村ら,2004)の自己評価を行った。実験中は心電図にて心拍数を連続記録した。幸福感低群の心拍数は、課題前と暗算課題時において、高群よりも有意に高かった。したがって、幸福感の高さは課題前および暗算課題時の心拍反応を緩和する可能性が示唆された。また、幸福感低群の示した心拍反応パターンはアロスタシス(自律神経系、内分泌系、免疫系を変動しながらストレスに適応する働き)の不全の一例と考える。主観的ストレス反応に関しては、幸福感の高低で違いはなかった。この結果は、Steptoeら(2007)の先行研究を追認した。これらの知見から、メンタルストレス・テストに対する主観的ストレスの自覚は幸福感に関連しないが、生理的反応に関しては、特性的な幸福感の欠如が急性ストレスに対する不適応反応と関連することが示唆された。
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