研究概要 |
本研究の主要テーマは,計量経済学の手法である「共和分分析」である。次数が2である経済時系列変数(データを定常とするのに2階の差分をとる必要のある変数,variablesintegratedoforder2,以下I(2)変数と略記)の共和分分析について,理論、実証の観点から研究を行った。 I(2)変数を含む経済データに構造変化がある場合に,共和分検定をどのように行うべきかについて既存の研究は存在しなかった。そこで本研究では,構造変化を考慮した形での共和分検定量を導出し,その漸近分布の数学的構造を詳しく考察した。漸近分布は未知のパラメータに依存しない形で定義されることが証明でき,その結果,コンピュータによってその漸近分布の近似値を求めることが可能となった。また,構造変化に関連するパラメータについての尤度比検定量は,漸近的にカイ二乗分布に従うことも証明した。こうした漸近理論に基づく理論結果をもとに,実際の日本のマクロ経済データを用いた実証分析を行い,構造変化を考慮した共和分分析が実際の計量経済分析において有用であることを例証した。 また,I(2)変数を含む共和分分析について,検定量の漸近分布に関する一般的な研究を進めるとともに,I(2)変数の考察を進めていく基礎作業として,I(1)変数の共和分分析を用いた実証研究なども行った。80年代以後の日本の消費の動向を理解する上で,共和分分析が非常に有効であることなどを示した。 こうした研究をもとに,オックスフォード大学,ティンバーゲン、インスティチュート,コペンハーゲン大学等を訪問し,研究者と情報、意見交換を行うとともに,研究成果の報告を行った。
|