研究概要 |
本研究の主要テーマは、計量経済学の手法である「共和分分析」である。次数が2である経済時系列変数(データを定常とするのに2階の差分をとる必要のある変数,variables integrated of order 2,以下I(2)変数と略記)の共和分分析について、理論・実証の観点から研究を行った。 昨年度の研究では、I(2)変数を含む経済データに構造変化が存在する場合について、共和分検定量の漸近分布を数学的に考察し、またコンピュータ・シュミレーションによってその分布の近似を行なった。こうした研究を踏まえ本年度は、構造変化が起きた時点を特定する検定手法について研究を行なった。I(2)変数を含む場合について、ラグランジュ乗数形の構造変化検定の漸近分布を数学的に考察し、コンピュータ・シュミレーションによってその分布の近似を行なった。また、I(2)変数に近い動き方をする擬似データをコンピュータで作成し、モンテカルロ実験によって構造変化検定のパフォーマンスを調べた。こうした構造変化に関する研究ととともに、I(2)変数を含む経済データのモデリングに関する研究も行なった。I(2)共和分モデルのパラメータに関する尤度比検定量については、漸近的にもカイ二乗分布に従わないものが存在することが知られている。こうした問題を回避するため、I(2)変数をI(1)変数に変換する手法を活用し、通常の漸近推論が成立する形でのモデリング手法について考察した。こうした手法をマネーストック等の経済データに適用し、それが実際に機能し得ることを確認した。 また、I(2)変数の考察を進めていく基礎作業として、I(1)変数の共和分分析を用いた実証研究なども行った。ボラティリティーの共和分分析への影響をモンテカルロ実験等で調べるとともに、近年の韓国ウォン・米ドルレートの動向を共和分モデルを用いて分析した。 こうした研究をもとに、海外(シンガポール等)及び国内(金沢、福岡等)の学会や研究会にてこれまでの研究成果の報告を行なうとともに、福岡にて国際会議を開催し研究成果等に関する意見・情報交換を行なった。
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