研究課題
昨年度はハノイを中心にフィールドワークを行ったが、今年度はベトナム(ホーチミン市)にて調査をするとともに、ベトナムの輸出縫製部門の競合国として、またベトナムの縫製生産基地の移転先として急速に台頭しつつあるカンボジア縫製産業の調査も実施した。MFA撤廃とWTO加盟においてベトナムの縫製産業は依然一定の成長を実現しているが、一方で2008年以降の高インフレおよびそれに伴った人件費の急上昇、さらにアメリカの金融危機に端を発する先進国市場の不況による問題が顕在化している。こうしたなか、生産性を向上できなかった企業はこの物価上昇に見合った賃金の上昇ができず、労働力確保が大きな問題となっておりその存続基盤が揺らいでいる。昨年度の調査でもそうした問題への対応として生産工場の郊外への移転などを実施している企業は多かったが、なかにはカンボジアなど隣国への進出を検討し始めている企業もあった。当研究課題の調査を通じて明らかとなったのは、ポストMFA時代で競争が激化したなかでベトナムの縫製産業が発展するためには、生産工程および品目についてのさらなる高度化を進めるとともに、知識集約度の高い機能を担う能力を国内に構築する必要性が高いという点である。この実現には、今まで看過されてきた国内の市場形成に重点が置かれることが重要である。当研究課題において明らかになった上記の点は、下記に挙げた論文として公刊しているほか、現在査読付国際学術誌にも投稿中である。
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『科学経済』(予定) 6月号(印刷中)
Working Paper WPF-28, Economic Society of Kansai University. 28
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