1. 平成20年2月に回収を終えた「全国市町村に対する児童虐待在宅ケースに対する在宅支援の実態および意見調査」の分析を行った。本調査では、主に次の4点について、記述統計により市町村の児童虐待ケースに対する在宅支援の実態を「家族維持」という視点から把握し、探索的因子分析によりその構成要素を明らかにした。1)市町村が実施している「家族維持」を目的とした援助、2)市町村が重要だと思っている「家族維持」を目的とした援助、3)「家族維持」に対する障害、4)「家族維持」のために必要な要素。加えて市町村において、実際には家族維持を目的とした援助はどの援助機関が行っているのかについての把握も行った。この分析結果は、多種他機関の複合体である市町村援助提供体系について正確で詳細な実態を把握することのできた大変貴重なデータだと考えている。また、本調査の分析結果は、家族維持のための実践モデルを開発する為の貴重な基礎データとなる。 2. 市町村が実施している家族維持を目的とした援助の内容を更に詳しく把握する為、1の質問紙的調査における探索的因子分析の結果得られた、実施されている援助の構成要素6因子を元に質問項目を作成し、9市町村の児童虐待(または児童虐待が疑われる)ケースに関する業務の中心となっている、もしくは、援助の全体像を把握している援助者を対象に半構造的インタビューを行った。インタビューは1時間半から2時間で、市区町村によっては複数名が対象として参加するところもあった。得られたデータは承諾を得て、録音され、質的研究法の枠組みを参考とし、分析を行った。最終的に、分析データは、質問項目ごとにカテゴリーとして抽出され、実践モデルの援助の手続きを開発する際の基礎データとした。 3. 上記の1、2の結果に合わせ、H18年度に全国児童相談所児童福祉司を対象に同質問紙を用いて行った調査の分析結果を元に、現在、市町村をモデルの使い手として設定した実践モデルを開発中である。
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