研究概要 |
研究目標とする「GPSデータの広帯域地震計としての利用」の実現のために, 本年度は地震時の実データに対して解析を行い, その精度評価, 利用を行った. 以下にその具体的内容を示す. 第一に, 本年度発生した2008年岩手・宮城内陸地震の際の地震時変動をキネマティックGPS解析によって精密に検出した. 通常用いられる日座標値では地震後に発生する短期的な余効変動等が地震時変動に混入する可能性があるため, キネマティックGPS解析によって純粋な地震時変動を抽出する事は地震発生サイクルの把握のために非常に重要である. 解析の結果, キネマティックGPSによって日座標値とほぼ同精度の地震時地殻変動を得ることができ, また顕著な短期的余効変動が存在しない事が明らかになった. しかし解析精度以下の微少な余効変動を検出できていない可能性もあり, 更なる解析精度の向上が必要と考えられる. 第二に, キネマティックGPSデータに含まれるノイズ源の解明のために推定パラオータ問の相関関数解析を行った. GPS解析の際に問題となる各パラメータ間の相関がどの程度キネマティックGPS時系列に影響を与えているかを定量的に評価するために解析ソフトウェアを一部改変し, それらを視覚化する事ができるようにした。その結果時系列の擾乱時には各座標値, 天頂大気遅延量, 受信機時計誤差等ほぼ全てのパラメータ間で相関の時間変化が見られる事が判明した. これらはキネマティックGPSデータを地震計として利用するためにクリアするべき点を端的に示す事例である.
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