本研究の目的は地球中心部の温度構造モデルの構築である。地球中心での温度は内核と外核の境界が固液境界であることから、地球の核を構成する鉄-軽元素系合金の高圧力下での融点で決定される。また温度構造モデルを構築するためには熱伝導度といった物性値に関係するマントル鉱物の化学組成も重要である。マントルおよび核に関する研究結果を以下にまとめる。 (1)マントル最深部の主要構成物質であるポストペロブスカイト(PPv)相とフェロペリクレース(Fp)相の間の鉄-マグネシウム元素分配関係について、核マントル境界の圧力を越える圧力条件(151万気圧)までの実験を行い、分配関係の組成依存性を明らかにした。その結果マントル最深部ではPPv相よりもFp相に鉄が強く分配されることが分かった。 (2)鉄-軽元素系合金の融点の圧力依存性は、融点以下の温度での結晶構造によって変化するため、超高圧条件下における鉄-軽元素系合金の結晶構造の決定は重要である。温度圧力発生についてはFe-Si系合金の実験において圧力242万気圧において温度3600度、また257万気圧において2400度までの発生に成功した。この温度圧力範囲では融解は起こらず、Fe-Si系合金の結晶構造は六方最密構造が広い温度圧力範囲で安定に存在することが明らかになった。またFe-S系合金の実験において圧力147万気圧、温度2600度までの実験を行い、Fe_3S相がこの温度圧力まで安定に存在することが分かった。一方本研究の特色として、集束イオンビーム(FIB)加工装置を用いた微小試料の加工技術の利用がある。これは非常に微小な高圧実験回収試料に対してナノテクノロジーを応用することにより分析可能にする手法であり、この手法の有用性に関する報告を行った。今後更に高温条件での実験回収試料についてこの手法を適用して組織観察を行い、高圧下での融点決定を目指す。
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