本研究の主目的はガンマ線バースト及びそれに付随する極超新星の爆発メカニズムを解明し、それに伴い合成、放出される元素合成の計算を行うことである。本研究では特に回転磁気流体効果に注目している。それは通常の超新星のモデルとして考えられているニュートリノ加熱では極超新星のような巨大な爆発を説明することは困難であるためであるが、一方、磁気流体モデルに於いては大きな回転エネルギーを爆発エネルギーに効率的に転化することが可能であるかもしれない。これらの計算を行うために当該年度は主として大学院生の黒田仰生とともに多次元磁気流体コードの開発を行った。このコードと我々が計算した超新星の親星モデルを用いて、太陽の25倍以上重い星の崩壊と磁気流体効果による爆発を調べた。その結果は日本天文学会、OMEG07(北大)や東工大でのガンマ線バースト研究会で発表した。回転磁気流体モデルを超新星爆発に応用する仕事は他のグループも行っているが、重要なパラメーターは親星の初期磁場の強さと初期回転速度である。これまでの計算では爆発するモデルとして、初期磁場、初期速度どちらも大きいものが採用されていた。このような場合、重力崩壊直後に強磁場が発生し、それがジェット状の爆発を誘導する。しかし極超新星となるような巨大な爆発が得られたことはなかった。そこで、我々は初期速度は速いが磁場の弱いモデルに着目した。このようなタイプでは磁場が成長し爆発を引き起こすまでに時間がかかり、その間に中心の中性子星の回転エネルギーが増大する。やがて差動回転によって磁場が充分強く成長すると中性子星の回転が爆発エネルギーに転化され極超新星に匹敵する大きな爆発エネルギーが得られることを発見した。このような計算は非常に時間がかかり、このメカニズムがどのような条件のときに起きるのか調べる必要があり、更なる検証計算が必要であるが、極超新星のモデルの手がかりを始めて得たという点で重要である。
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