研究概要 |
これまでに取得されたすばる望遠鏡搭載の中間赤外線観測装置(COMICS)による高空間分解の撮像・分光データに加えて、最新の「あかり」衛星搭載近赤外線カメラのデータを用いて、系内、マゼラン雲、近傍銀河の星間塵の形成、進化の過程を調べた。中でも特に、ダストの形成過程に着目した研究において、天文赤外線衛星「あかり」を用いて、超新星2006jcの爆発後約220日後における近〜中間赤外分光データを取得し塵の形成現場を捉えることに成功した(2008年日本天文学会春季年会にて記者発表(http://www.s.u-tokyo.ac.jp/press/press-2008-05.html); Sakon et al. 2008, ApJ, 692, 546-555)。この結果、超新星爆発時に形成されるダスト量は初期宇宙のダスト量を説明するために必要な量よりはるかに小さいものの、大質量星は、超新星爆発の時だけでなく、Wolf Rayet活動等の進化途中段階の質量放出によっても、ダスト形成に寄与し得るという重要な示唆を与えた。本天体SN2006jcのように、特に太陽の数十倍から百倍程度の大質量星は、その進化の寿命が短いがゆえに、恒星進化のプロセスで合成した重元素を宇宙に手早く還元すると考えられるため、本研究の結果は、初期宇宙に観測されるダストの起源を探る上で重要な見地を与えるものであるといえる。 また、あかり衛星とすばる望遠鏡COMICSのデータを基に、星間空間および星間空間中での芳香族炭化水素ダストの変質過程を、特に幅射場の際に着目して詳細に調べ、その電離やサイズと、赤外放射の関係を評価した(「IAU Symposium 251; Organic Matter in Space」, 「Exoplanets and Disks: Formation and Diversity -the 2nd Subaru International Conference」などで発表、Sakon et al. 2008, IAUS, 251, 241-246)。
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