研究概要 |
本研究では重い電子系物質YbT_2Zn_<20>(T=Ir,Rh,Co)の単結晶育成及び高圧下物性測定を行った。これらの一連の物質群の中で最も大きな電子比熱係数を有するYbCo_2Zn_<20>の磁場中における電気抵抗・比熱測定を行った結果、近藤温度は非常に小さくおよそ1K程度、結晶場分裂のエネルギースケールも同程度の大きさであることがわかった。さらに圧力下比熱測定からは、過去に我々のグループで行った圧力下電気抵抗測定において1GPa以上の低温域で観測された異常が相転移によるものであることを実験的に明らかにした。解析の結果得られた電子比熱係数と電気抵抗率におけるT^2の係数Aはいずれも1GPaに向かってエンハンスされており、また臨界圧力付近における低温での比熱の温度依存は非フェルミ流体的振る舞いを示すことから、約1GPa付近に磁気秩序相が出現する臨界圧力が存在することが明確となった。この1GPaという低圧領域に磁気臨界圧力が位置するYb化合物は極めて稀であり、今後のさらなる研究により磁気臨界圧力近傍の電子状態の理解が深まると期待される。 また遷移金属元素の異なるYbIr_2Zn_<20>,YbIr_2Zn_<20>において圧力下電気抵抗測定を行った結果、約3 GPa付近に磁気臨界圧力が存在することを示唆する実験結果を得た。YbCo_2Zn_<20>よりも格子定数が大きなYbIr_2Zn_<20>,YbIr_2Zn_<20>に対する圧力効果は、YbCo_2Zn_<20>において常圧から観測されたものと類似している。これらの系統的な研究から、近藤温度のエネルギースケールが磁気秩序の出現に重要な関係を持つことを見出した。
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