当研究は共振器中で増強したマイクロ波を用い、それを時間変化させることでマイクロ波電場中を通過する分子の並進運動を制御し、分子気体の減速と捕捉の実現を目標とするものである。本年度は計画の1年目であり、全く新しい実験装置を立ち上げる研究であるため、実験装置の作成と予備実験に終始した。当研究に最低限必要な、真空チャンバー、真空ポンプ、四重極型質量分析計、ファブリー・ペロー型共振器、マイクロ波発生源などについてすべて手配が完了しており、これらの組み立てが進行中で新年度早々には完了する見込みである。本年度夏にはブリティッシュコロンビア大の百瀬教授の研究室に3週間ほど滞在し、静電場を用いた分子ビームの運動制御の技術を習得させて頂いた。また、秋には日本物理学会におけるシンポジウム講演において、講演の一部で本研究計画を紹介し、導波管型共振器を用いた分子減速法のアイデアを新たに披露した。この新しい減速法は本研究計画段階で予定していたファブリー・ペロー型共振器の使用にくらべ、10倍程度減速の効率が良くなることが期待される。予備実験としては導波管型共振器を作成し、その性能評価を行い、分子減速実験を行うのに十分なマイクロ波の増強率が得られることを確認した。また、本研究課題とは異なるが、冷却Yb原子の光会合分光について、本年度ではPhysical Review Letter誌に1本、Physical Review A誌に1本、論文が掲載された。
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