研究課題
本研究の目的は、発展途上にある次世代プラズマシミュレーション手法であるブラソフコードの要素技術開発を行うことである。ブラソフコードは無衝突プラズマの運動論を自己無頓着に解き進める第一原理シミュレーション手法の1つであり、ブラソフ(無衝突ボルツマン)方程式とマックスウェル方程式により、位相空間分布関数と電磁界の時間発展を解き進めるコードである。本研究ではまず、数値振動を完全に除去しつつ解の正値性と保存則を満たしたまま多次元の線形移流方程式を解くことができる3次精度の数値補間法を開発し、ブラソフ方程式に適用した。性能評価の1例として、5次元電磁ブラソフコードを用いて磁気リコネクションの計算機実験を行った。磁気リコネクションはこれまでに、磁気流体(MHD)、Hall-MHD、電磁ハイブリッドおよび電磁粒子コードを用いて計算されており、計算結果を比較できる点で最適な課題である。本研究では、イオンの慣性長に対して十分に荒い解像度を用いた場合とイオン慣性を十分に解像できる高精度シミュレーションを行った場合を比較し、前者がMHDシミュレーションの結果と後者がHall-MHDおよび電磁ハイブリッドシミュレーションの結果と近くなることを示した。これは、ブラソフコードがさまざまな解像度の計算に対してロバストであり、今後の次世代スーパーコンピュータにおけるマルチスケールシミュレーションに非常に適したアプリケーションであることを意味している。
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