粉粒体や泡沫状媒質、多孔質物質、ガラスなど、長距離秩序のない不均一な微視的構造を持つ媒質は多く存在する。このような媒質は、高温・高密度な相においてガラス相やエイジング、記憶効果など、非常に似通った性質を示すことがわかっている。本研究においては、粉粒体の立場からこの問題に取り組み、特に微視的構造と巨視的な媒質の振る舞いの関係について、実験、理論、数値計算の面から、理解を深めることを目的とする。具体的には次の3つの視点から研究を推し進めてきた。1)物理実験によって、粒子配置と力学的非線応答の関係について系統的に調べる。2)数値計算によって、微視的構造の詳細を物理実験より詳細に調べることによって、連続体記述のための形成過程の定量化に必要な情報を模索する。3)不均一な媒質に対する最も簡単なアプローチの一つとして、平均場近似を用いた。円盤媒質の応力歪み関係を記述し、微視的状態量と巨視的振る舞いの関係を考察する。 その結果次に挙げるような結果が得られた。物理実験については、力学的摂動の与え方をいくつかの方法で試み、実験を行った。さらに、粉粒体質の応力歪み関係について、2次元での数値実験と平均場理論による解析を行った。数値実験において、粉粒体媒質の形成過程を系統的に変化させることによって、巨視的な円盤媒質の物性が変化することを示し、それが充填率と平均接触点数の積に線形に依存することを明らかにした。平均場近似による解析との対応も明らかにし、ヤング率に関しては巨視的な物性を微視的な量でかなりよく見積もられることが分かった。ポアソン比に関してはまだ考察の余地があり、次年度の課題として検討したい。
|