粉粒体や泡沫状媒質、多孔質物質、ガラスなど、長距離秩序のない不均一な微視的構造を持つ媒質は多く存在する。そして、これらの媒質が、高圧・高密度な相(ジャミング相)においてガラス相やエイジング効果、記憶効果など、非常に似通った性質を示すことがわかっている。近年になって、これら共通の振る舞いを統一的な枠組みで理解しようと試みられてきた。力学的な特性はその微視的な構造に強く依存し、巨視的な振る舞いを理解予測するのに微視的構造の理解が不可欠である。本研究において我々は、粉粒体の立場からこの問題に取り組む。媒質の巨視的な物性はその媒質の形成過程(粒子配置)に強く依存し、圧力や充填率などの状態量から一意的に決定できず、弾性体力学などでの連続体記述における定量的な議論にいたっていない。我々の研究の最終的な目的は、粉粒体の静力学における基礎方程式を確立することである。 我々は数値計算によって、二次元粒子の充填過程を系統的に変化させることにより、ヤング率やポアソン比といった円盤媒質の巨視的物性の変化を観察した。これにより、充填過程を定量的に評価するための系を実現したことになる。また、実験的にも実現可能な系であることから、現在進行中の光弾性体による系での物理実験による検証も可能なことがこの系の利点でもある。また、この数値実験によって、粒子間の相互作用に摩擦がある場合の2次元粒子系において、ジャミング転移点の履歴依存性も陽に示された。ジャミング転移の履歴依存性については今までよく調べられておらず、これにより新たな知見が得られると期待できる。
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