本年度は、渦糸運動の高次近似モデルとして福本-モハットにより提唱された4階非線形シュレディンガー型方程式について研究を行った。具体的には4階非線形シュレディンガー型方程式の解の存在と一意性について、定在波解の具体的な形状について、という2つの問題に取り組んだ。 1、4階非線形シュレディンガー型方程式の解の存在と一意性 現象から導かれた微分方程式が解を持つか?また微分方程式の解が存在するとき、ある初期条件の下で解が唯一つに定まるか?という問題は方程式を研究する上で最も基本的な問題である。4階非線形シュレディンガー型方程式の解の存在と一意性についてはいくつかの既存の結果があるが、それらの証明は煩雑であった。そこでわれわれは、ある調和解析の定理を用いることにより、既存の結果より見通しのよい証明を与えた。 2、4階非線形シュレディンガー型方程式の定在波解の形状について 微分方程式の解の長時間挙動を調べることは数学的に興味深いだけでなく物理学的にも重要である。しかしながら4階非線形シュレディンガー型方程式は方程式自体がかなり複雑なため、その解の長時間挙動を調べるのは容易ではない。われわれは4階非線形シュレディンガー型方程式の解の長時間挙動を調べる第一歩として、4階非線形シュレディンガー型方程式の特殊解、特に定在波解について研究を行った。 われわれは福本-モハットのモデルが非線形シュレディンガー方程式の高次近似モデルであるという事実からそれらの定在波解の形は類似しているだろうと予測し、4階非線形シュレディンガー型方程式の定在波解の具体的な構成を試みた。その結果、福本-モハットのモデルが完全可積分となる、ある特別な場合には、非線形シュレディンガー方程式に類似した定在波解を見つけることが出来た。
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