研究概要 |
UC階層とは普遍指標をタウ函数として許すような無限次元可積分系であり,KP階層の拡張を与えている.本年度は,研究代表者にとって数年来の懸案であったUC階層に付随する線形補助問題(Lax形式)の構成法を確立した.具体的な要点は線形問題の従属変数である,所謂,波動関数の選び方,及び,UC階層から閉じた関数方程式を得る仕組みを与えたことにある.後者については,複素積分についての結果を用いるが,このような議論は従来の可積分系分野に見られないものであり,基本的ではあるが興味深い.さらに,UC階層の線形補助問題が得られた一つの恩恵として,UC階層とモノドロミー保存変形の関係が明確なものとなった.特に,パンルヴェ第6方程式やガルニエ系を含んだシュレジンガー系の中のクラスについて,それらがUC階層の相似簡約に由来するものであることを示した.例えば,パンルヴェ第6方程式の線形補助問題のうち最も標準的な,複素射影直線上2階・確定特異点4点であるものはUC階層に由来することが明らかとなった.当該のUC階層とモノドロミー保存変形についての関係については,継続的に考察するべきものであり,今後のパンルヴェ方程式研究にとっても重要な課題と思われる. 解が知られている関数で解かれるにも関わらずカオス的な振る舞いを示す力学系,所謂,可解カオス系についての研究を行った.具体的には楕円曲線,またはある有理楕円曲面(Hesseペンシル),上のn倍角写像に由来するようなそれぞれ1次元,2次元の力学系を考察した.特に,これらの力学系が超離散類似を許す事,トロピカル幾何学的な記述を持つ事等を示した.
|