1、私は日本のX線天文衛星「すざく」を用いて、銀河群・銀河団を満たす高温プラズマ中に含まれる酸素や鉄といった重元素量を決定した。これにより得られた結果と超新星爆発の理論モデルを仮定することにより、銀河団中に含まれる重元素のIa型、II型超新星爆発で生成されている割合を決定した。Ia型、II型ではもととなる星の大きさが違うために、この結果からどのような星が生まれそして死んでいったかを知る手がかりとなる。私の結果から、現在の銀河団ではあまり起こっていない重い星の爆発であるII型がIa型よりも約3倍多く宇宙が始まってから現在までに起こっていることを発見した。このような大量のII型超新星爆発を経て現在の宇宙は形成されてきたことになる。この成果は銀河団の化学進化を知る上で重要な事実であり、米国天文学会誌アストロフィジカルジャーナルの速報論文として掲載され、日本天文学会2008年秋季大会に於いて記者発表を行った。 2、次世代のX線天文衛星搭載を目指したマグネティックカロリメータ検出器(MC)の開発に於いて、私は自ら設計し、製作した信号を読み出すための超伝導量子干渉計素子を用いて、MC研究の世界トップレベルであるドイツ・ハイデルベルグ大学のグループと共同研究を行った。私の設計した素子はハイデルベルグ大学の使用している素子と比べても極低温下での雑音が小さく、今後の超高エネルギー分解能実現のためには、さらなる読み出し素子の開発が必須であるという結論が得られた。私は、素子開発の成果を極低温物理学会で報告し、極低温物理学会誌に掲載された。
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