1、私は日本のX線天文衛星「すざく」を用いて、銀河・銀河群・銀河団を満たす高温プラズマ中に含まれる酸素、マグネシウム、ケイ素、硫黄、鉄といった主要な重元素の量と分布を決定した。これまで、銀河群(~1keV)と銀河団(~3keV)の重元素量と分布は前年度の私の研究において調べられていたが、今回はそれに加えてこの2つの温度帯をつなぐ低温銀河団(~2keV)の観測を行った。この結果、銀河群と銀河団で得られた結果をスムーズにつなぐこととなり、銀河群・銀河団の進化の過程に制限をつけることができた。また、どのように銀河団を満たす高温ガスに重元素が供給されたのかを調査するために、スターバースト銀河NGC4631の調査をおこなった。この結果として銀河のディスク部分に比べてハロー部分に含まれる重元素はII型超新星爆発で生成される元素パターンに近いことがわかった。このことは、II型超新星爆発で生成された元素が選択的に銀河外に出されたことを示唆しており、今後の銀河群・銀河団を満たす高温ガスにどのようなプロセスで重元素汚染が進んだかの解明の手がかりとなる。 2、次世代のX線天文衛星搭載を目指したマグネティックカロリメータの開発に於いて、私はドイツ・ハイデルベルグ大学との共同研究から得られた成果を日本天文学会で報告を行った。また、今年度はカロリメータ検出器を動作させるのに必要な極低温環境を実現する断熱消磁冷凍機の基礎開発も行った。私は断熱消磁冷凍機の心臓部である常磁性体塩の製作と超伝導マグネットコイルをヘリウム温度領域に組み込み、その性能評価を行った。実際に超伝導マグネットコイルには9Aというヘリウム温度下で流すための超伝導/常伝導配線の工夫を行い、常磁性体塩に3Tもの磁場を印加することができた。
|