研究課題に関する平成19年度に行った研究実績は以下の通りである。 (A)DLA母銀河の探査に関して。2007年4、6月の2回にわたって、ガンマ線バーストに現れたDLAに注目し、母銀河探査観測をハワイ島すばる望遠鏡にて行った。その結果、吸収線源から10万光年離れたところに銀河を発見した。遠方DLA母銀河の検出は世界で10例にも満たず、その候補天体の検出は学術的に優れた成果である。今後、銀河の分光観測を行い、その検証を行う予定。この成果は、日本天文学会にて発表後、現在、論文作成中である。 (B)MgII系の進化に関して。強い吸収線(Strong MgII)系に関するすばる望遠鏡による観測済みのデータを東京大学のグループと共同で解析・検討を行った。その結果、低赤方偏移(z<2)と比べると、高赤方偏移(z>2)では、その数密度が減少していることが判明した。高赤方偏移に関する結果は世界で初めてのものであり、DLAおよび銀河進化に関する新たな知見を提示する優れた成果である。この成果に関して、現在、論文作成中である。 (C)吸収線系理論モデルの構築に関して。DLAに関する理論モデル使って、電波観測された近傍銀河の星形成率などと比較することにより、質量の大きな銀河がDLA、一方、媛小銀河がsub-DLAに対応することを示唆した。従来、近傍銀河とクエーサー吸収線系の関係性に基づき、銀河形成を理論的考察した研究は皆無であり、ユニークかつ優れた学術成果である。この結果は、日本天文学会や海外研究会などに於いて発表を行い、現在、海外学会誌The Astrophysical Journalに投稿中である。 以上の研究実績の他に、研究課題を包括的に取り纏める必要性を強く感じ、今年度から「クエーサー吸収線系研究会」を発足させた。これは、観測と理論研究の連携を強化し、発展的なクエーサー吸収線系に関する研究推進を目的とする萌芽的ものであり、今後も継続的に開催する予定である。
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