研究課題に関する平成20年度に行った研究実績は以下の通りである。 (A)DLA母銀河の探査に関して。昨年度(本課題採択初年度)ガンマ線バーストに現れたDLA母銀河探査観測の解析をさらに行い、この結果をまとめた論文を作成中である。また、2009年秋季に共同利用が開始される予定の補償光学装置(AO)を用いたDLA母銀河観測計画を立案し、プロポーザルを提出した。採択されれば、2009年度後半に観測実施できる予定である。 (B)MgII系の進化に関して。昨年度、高赤方偏移(z>2)での数密度を決定した強い吸収線(Strong MgII)系に関して、さらにCLOUDYコードを用いて、その物理的・化学的状態の考察を、東京大学の研究グループらと行った。さらに、この系の中性水素量と、同種族の水素吸収線系であるsub-DLAやLyman-limit systemと比較することによって、その起源を解析中である。これにより、高赤方偏移(z>2)に於けるMgII系と相関の強い原始銀河の解明やその周辺のハローガスや銀河間ガスの化学進化の考察ができると考えている。この成果に関して、現在、論文作成中である(概要は、記載の紀要に掲載し発表した)。 (C)吸収線系理論モデルの構築に関して。昨年度の考察結果、すなわち、中性水素吸収線系(DLAおよびSub-DLA)が電波観測による近傍銀河としてどのように対応するかという結果(詳細は、記載の紀要に掲載し発表した)に基づき、現在、銀河形成に関する数値シミュレーション(vGC)で得られた銀河の空間分布を組み込んだDLA形成に関する理論モデルのコードを開発中である。これにより、銀河とDLAの空間分布から、その起源や進化を考察する予定である。 以上の研究実績の他に、昨年度(本課題採択初年度)から発足した「クエーサー吸収線系研究会」を、当該研究拠点(東京理科大学)にて開催した。これは、観測と理論研究者が交流し、本研究課題に関する研究推進を目的とする萌芽的ものであり、今後も継続的に開催する予定である。
|