1.はじめに 気体・液体キセノン(Xe)は放射線検出器に用いられ、最新の科学の進展に寄与しており、その将来性は誰もが認めている。しかしXe検出器にとって重要なXeの電離、励起を表す物理量であるW値、Ws値は、気体-液体Xe間で不連続性を有し、そのメカニズムは未だ解決されていない。この問題を解決しXe検出器の発展に寄与するとともに気体から液体にわたるXe物性変化を理解することが本研究の意図するところである。本年度は、密度0の極限でのシンチレーション光量(=E/Ws、 Eはα線のエネルギー)を決定し、密度上昇によるXe物性変化の基準を作ることを目的とした。 2.Xeシンチレーション光量と電離電子数の絶対測定 Xeのシンチレーション光量と電離電子数を絶対測定するための装置を開発した。これを用い241Amからのα線でXeを電離・励起させ、生じた電離電子・シンチレーション光子数の絶対測定を行なった。Xe密度0.025g/ccにおいて、W値は約21eV、 Xeの励起原子の発光への寄与を表すWex値は約35eVという値が得られ、これまで意見の分かれていた絶対シンチレーション光量の研究に一石を投じた。 3.Xeシンチレーションの時間特性からの発光量の決定 Xeのシンチレーション発光の減衰曲線を測定し、その減衰の様子から再結合に伴うシンチレーション発光のメカニズムを探った。測定結果からはα線によって生成したイオン・電子対のうち70〜90%が再結合を起こし、残りは再結合を免れることが判明した。 4.まとめ 2.と3.の実験結果より、Xeイオン・電子対が100%再結合した場合にはXeのWs値は約13eVになることがわかった(密度0の極限でのシンチレーション光量)。実際には一部再結合しないイオン・電子対が生じるためにWs値は、Xe密度に依存し0.05g/cc程度では14ev程度になることが判明した。
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