ダストの類似物としての微粒子を実際に研究室で合成し、その光学特性や高温での振る舞い等を調べる事で、星・惑星形成過程におけるダストの果たす役割を明らかにする事を目的に研究を展開した。 具体的には、本年度、非晶質シリケイト微粒子に炭素質層を形成した星間ダスト類似物の結晶化実験により、メタンを含む炭素質層で結晶化温度が著しく下がる事を見出した。この結果は、シリケイトダストの結晶化がその周囲の環境に影響を受けることを意味している。本成果はThe Astrophysical Journalに査読付論文として公表した。 また、従来のガス中蒸発法による無機微粒子の生成法を応用して、出発試薬のあるアントラセンやナフタセンのPAHクラスターを生成し、その光学スペクトルを測定した。PAHクラスターは星からの紫外線照射により、合成、成長、変成が同時に起こっていると考えられている。その為、紫外線に対するPAHの振る舞いを明らかにすることが重要である。そこで、出発試薬を用いて作製したPAHクラスターのUVに対する変成実験を行なった。さらに、本年度8月にすばる望遠鏡を用いた観測を行い惑星状星雲の環境でのPAHからPAHクラスターへの成長の様子と、HII領域、反射星雲、Young Stellar Objects中でPAHクラスターが破壊されてfree flying PAHとなる変成のプロセスをサイズの観点から探る研究を行った。この成果をまとめ、IAU SymposiumやThe Workshop on the Chronology of Meteorites and the Early Solar Systemなどの国際会議で報告した。PAHクラスター実験の成果を論文としてまとめ、The Astrophysical Journalに投稿中である。
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