研究概要 |
研究代表者がこれまでに研究してきた分子ダイナミクス制御・レーザー制御理論に基づいたナノマシンの理論設計, 実験結果の解析, 機能分子の運動の観測手段の提案を目指して研究を進めた。特に、分子モーターの人工合成に必要と思われる基礎理論の構築を目指した研究を行った。外場による分子内一方向回転運動の生成に重要と考えられる手法として、 (1) 赤外レーザーによる分子内ラチェット構造を利用した手法 (2) ポンプ・ダンプUV/可視パルス列による電子励起状態を経由した手法 の2つを提案し、量子化学的手法により妥当性と分子運動の機構を検討した。また、第一原理分子動力学法によりモーター分子の運動を評価して回転運動の伝達や散逸の機構を明らかにした。これらの研究成果を総括し、台湾での国際会議や春年会アジア国際シンポジウムに招待された際に発表した。近年、分子性結晶内のベンゼンの回転運動をNMR等で測定した実験が報告されている。本研究成果をさらに発展させるため、この実験結果を解析し、分子内回転運動により機能発現する分子機械の研究を展開していく予定である。 また、Dreismannらの中性子散乱実験[1]の理論解析も行った。水素・重水素分子による熱外中性子散乱の微分断面積比を求めて結果を実験と比較した。この結果は現在投稿準備中である。 [1] Z. Dominguez, H. Dang, M. J. Strouse and M. A. Garcia-Garibay, JACS, 124, 7719-7727 (2002) [2] C. A. Chatzidimitriou-Dreismann, Phys. Rev. Lett. 79 (1997) 2839
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