高分子アクチュエーターの特徴として、軽量・柔軟性・成形加工のしやすさが挙げられる。また有機材料で構成されているため金属疲労が発生せず、電磁モーターの振動や摩擦など耳障りな雑音を回避できるのも特徴として挙げることができる。このような高分子アクチュエーターの特徴を活かせば、人工筋肉に代表される次世代デバイスの実現可能性を大幅に改善することができる。本研究は、ソフト&ウェットな性質を有する高分子ゲルの分子構造を空間的にデザインすることによって、アクチュエーターとしての機能として望まれている高速駆動・高耐久性を実現することを目標とした。これまでのゲルアクチュエーターは、応答速度が遅く、繰り返し動作特性(耐久性)が低いことから、実用化を図る上で大きな問題となっていた。高分子ゲルの駆動速度は、含有する溶媒をいかに素早く外部に排出するかが最大のポイントとなる。また、ゲルアクチュエーターを繰り返し駆動させると劣化する原因は、ゲル内部で高分子鎖同士が絡み合いを起こし、元の状態に復元しないことが原因とされてきた。そこで申請者は、ゲル内部に溶媒排出のための流路を分子レベルで確保し、さらに高分子鎖同士の絡み合いを同時に回避することが可能な、球状高分子でゲルの骨格を形成し、それらを直鎖状高分子で化学架橋する新規ゲルを合成した。このような新規ゲルは、ゲルの骨格が球状高分子で構成されているため、溶媒排出のための流路が常に確保されことで高速応答が実現できた。さらに球状同士は絡み合いを起こしにくいため、アクチュエーターの繰り返し特性(耐久性)が大幅に改善された。
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