本研究の最終的な目的は、合成化合物ライブラリーのスクリーニングから発見した蛍光色素である9B8のオルガネラ選択性を明らかにして、新規の蛍光色素として開発することである。 申請者は平成19年度の実験において9B8のターゲットタンパク質を同定するためにアフィニティーカラムを用いたターゲットタンパク質の同定やクロスリンカーを用いたターゲットタンパク質の同定法を試みた。しかしながら、いずれの方法でもターゲットタンパク質の同定はできなかった。そこで、あらかじめHeLa細胞を9B8で処理して、この細胞をホモジナイズした後に、スクロース密度勾配遠心法によりオルガネラ分画し、SDS-PAGEで分離したところ、蛍光で染色されたバンドを検出することができた。このバンドを切り出してMS分析した結果、ミトコンドリア外膜に存在ずるSLC25A5というタンパク質を同定することができた。 次に、9B8でHeLa細胞を処理して蛍光顕微鏡で詳細にミトコンドリアを観察した。すると、上記のターゲットタンパク質の同定の結果を補強するように、ミトコンドリア外膜に9B8が特異的に局在していることがわかった。 不思議なことに、このSLC25A5と9B8は共有結合を介して結合していることが最近の研究で分かっている。そこで平成20年度の研究では9B8がSLC25A5のどこに、どのような反応メカニズムによって共有結合するのか解明しようと考えている。
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