研究概要 |
当該年度における研究の目的は、両親媒性かつノニオニックという機能性高分子を提供するビニルモノマー、N-ビニルアセトアミド(NVA)に適した新規架橋剤を合成し、二重のネットワークを有するヒドロゲルを作成することであった。以下に学会および論文において発表した概要を記す。 1.鎖長(5〜9)と酸素数(1〜3)を変化させた新規架橋剤を数種類合成し、その中でNVAのヒドロゲル化に最も適した架橋剤を(N,N-5-oxanonamethylenebis-N-vinylacetamide)を調製した。 2.将来貼布剤基剤へ応用されることを視野に入れ、体温に近い重合温度37℃および水中でのラジカル重合条件を設定し、膨潤度15程度を有するヒドロゲルを得た。 3.NVA同士からなる相互侵入網目(IPN)構造を有するヒドロゲルを得て、その強度を圧縮試験により評価し、同濃度から調製されたヒドロゲルと比べて強度が向上していることを確認した(破断強度約2.3MPa)。 4.非共役ビニルモノマーであるため共重合による多様化に劣るというNVAの欠点を、IPN構造を導入することによって克服し、様々なビニルモノマーと自在に組み合わされたヒドロゲルを調製可能であることを示した。つまり、NVAと汎用性ビニルモノマー(メタクリル酸、N-イソプロピルアクリルアミド、メタクリルアミドなど)と組み合わされたIPNヒドロゲルゲルを調製した。 5.貼布剤基剤として広く利用されているポリアクリル酸(AAc)とNVAを組み合わせたIPNゲルを作成し、調製順序により異なる膨潤度に由来する構造の違いが、圧縮強度(AAc/NVA=1.0 MPa, NVA/AAc=0.15 MPa)の違いに影響を及ぼすことを明らかとした。
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