当該年度における研究の目的は、1年目から得られた様々な組成のゲルを用いて薬物徐放実験を行い、高分子構造と薬物徐放との関係を導き出すことであった。以下に学会および論文において発表した概要を記す。 1.非共役ビニルモノマーであるため共重合による多様化に劣るというN-ビニルアセトアミド(NVA)の欠点を相互侵入網目構造を導入することによって克服したが、それらの中でもアクリル酸とNVAを組み合わせたゲルは、NVAのみから得られたゲルと比べて破断強度が5倍向上した。 2.アクリル酸(AAc)と組み合わせたゲルのうち、調製順序を工夫することによって、ゲル全体に占めるNVAの割合を約96%のものを調製した(PAAc/PNVAゲル)。このゲルは、NVAの両親媒性という特質を保持しており、水以外の有機溶媒にも良好に膨潤した。 3.PAAc/PNVAゲルは、経皮吸収製剤において促進剤として用いられているエタノールに良好に膨潤し、難水溶性薬物であるパクリタキセルを単純拡散により放出することを確認した。 4.NVAゲルの細胞接着性を調べ、相互侵入網目構造がタンパク質吸着の向上や接触角に影響を及ぼし、その結果細胞接着性および増殖能に効果がある結果が示唆された。 5.N-ビニルアルキルアミドの重合反応性を調べるためにN-位に置換基を導入しそのラジカル重合反応性及び得られた高分子の立体構造について調べた。
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